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中学時代にSFに入り、そして推理小説。んで今ミステリーにハマっています。
たまに歴史もの。
読むのも好きなら買うのも好き。

売れている本(ベストセラーになった本)、
評判のいい本(「このミステリーがすごい!」で評価が高い本)、
賞を取った本(直木賞や日本ミステリー大賞授賞作品)を読んでいればハズレは少ないだろうってことで・・・

90点〜:大傑作!!絶対読んで  80点〜:読んでよかった〜ん  70点〜:まぁまぁ  60点〜:なんとも・・・


90点以上の作品
Noタイトル作者
199点 「永遠の仔」天童荒太
296点 「白夜行」東野圭吾
395点 「壬生義士伝(上下)」浅田次郎
395点 「狼の紋章」平井和正
594点 「死霊狩り」平井和正
693点 「姑獲鳥の夏」京極夏彦
792点 「竜馬がゆく」司馬遼太郎
792点 「火車」宮部みゆき
991点 「私が殺した少女」原寮
991点 「機動戦士ガンダム」富野喜彦
1190点 「模倣犯」宮部みゆき
1190点 「塩狩峠」三浦綾子
1190点 「ホワイトアウト」真保裕一

作者目次
−あ−
浅田次郎 綾辻行人 新井素子 五木寛之 井上ひさし 井上夢人 歌野晶午 江國香織 逢坂剛 大沢在昌 岡嶋二人 小川洋子 乙一
−か−
片山恭一 金原ひとみ 川端康成 北村薫 京極夏彦 桐野夏生 小池真理子 河野多恵子
−さ−
雫井脩介 司馬遼太郎 島田荘司 志水辰夫 真保裕一
−た−
高木光彬 貴志裕介 高見広春 高村薫 太宰治 田中康夫 谷崎潤一郎 天童荒太 戸田京子 富野喜彦
−な−
夏目漱石 貫井徳郎 
−は−
原寮 馳星周 東野圭吾 福井晴敏 船戸与一 平井和正 藤崎麻里
−ま−
松本清張 眉村卓 三浦綾子 三谷幸喜 見延典子 宮部みゆき 宮本輝 村上春樹 村上龍 森村誠一
−や−
矢作俊彦 山口雅也 山中恒 横溝正史 横山秀夫
−わ−
綿矢りさ 

−最近の更新− (2006/09/10)
井上夢人 プラスティック おかしな二人
岡嶋二人 クラインの壺
貫井徳郎 プリズム 慟哭
三谷幸喜 オレはその夜多くのことを学んだ
志水辰夫 飢えて狼

浅田次郎
95点「壬生義士伝(上下)」
浅田次郎の新選組の話だ。
新選組というと普通は近藤、土方、沖田の3人のうち誰かを主人公にするだろうが、この作品は吉村貫一郎というヒトが主役。
しかも、明治時代に彼に関る関係者たちのインタビュー形式という時代小説としては特異な構成。
それまた泣ける泣ける、涙がとまらんよ。
泣き所が10箇所はあるね。
テレ東の10時間時代劇、そして映画化もされた。
テレ東は渡辺謙が、映画では中井貴一が主演だった。
テレ東のほうは結構泣けた。
でも小説が一番泣けるぞ。

72点「輪違屋糸里」
2004年出版。
触れこみが「壬生義士伝を超えた!! 浅田次郎の新たなる新選組」だって。

キタ━━━ヽ(∀゜ )人(゜∀゜)人( ゜∀)ノ━━━ !!!

早速買って読んだがな。
ところが泣き度ゼロ、壬生義士伝っぽいのを期待するとガッカリするぞ。
「壬生義士伝を超えた!!」とか言うなや。
駄作じゃないんだから。

これは新選組の初期の部分、京に上って芹沢鴨が殺られるまでの話。
輪違屋糸里は「わちがいやいとさと」と読む。
なんじゃこのタイトルと思われるが、「輪違屋」とは京の島原の遊郭、「糸里」とは太夫の名前である。
土方の女と考えてよい。
大島渚監督の新撰組の男色を扱った映画「御法度」で、新撰組隊員が輪違屋に行くシーンがある。
「糸里」は主人公ではあるが、このほかに2人の新選組を世話する女性が3人主役級で登場。
お梅とお勝とお糸。
お梅は芹沢鴨の妾、お勝は壬生浪士組を世話する前川の女将、お糸はタイトルの糸里のこと。
歳三の女だ。
当作品は女性を主人公とした新撰組の芹沢鴨までの物語である。
女性が見た新撰組といったところか。
新撰組の本としては異質。

68点「鉄道員(ぽっぽや)」
浅田次郎の名前を一気に全国区に押し上げた大ベストセラー作品。
数作からなる短編集だが、単なるおばけの話。
なんでこんなに売れたのかは疑問。

72点「地下鉄に乗って」
浅田次郎のタイムトラベルもの。
浅田のタイムトラベルものの最初の作品らしい。
「鉄道員(ぽっぽや)」の1作にもこれに似たような作品があったな。

主人公は40前の男性。
父の確執や兄の自殺などの過去のわだかまりをタイムトラベルで過去に行き、真相を探る。

イマイチかなー。

68点「きんぴか」
浅田次郎の出世作。
浅田次郎は初期のほうがいいという評判から読んでみた。
おふざけ的な笑いあり涙ありの連作。
そうか、初期はこんなの書いていたんだーとしみじみ。

刑務所帰りの元ヤーさん、元代議士秘書、元自衛官のドロップアウト3人がトリオを組んで、組の抗争と中心にさまざまな事件に巻き込まれる。
面白いところもあるんだけど、頑張って笑わそうとしているところがちょい辛い。


綾辻行人
72点「十角館の殺人」
シリーズ第一作。
交通手段のない孤島というありがちの設定。
したこれもトリックもの。
東野圭吾の「名探偵の掟」を読んだ後だと、素直に推理小説を楽しめない。


新井素子
73点「ひとめあなたに・・・」
初めて新井素子を読んだ。
女の子が好きそうなロマンティックなお話と思いきや、結構ブラックである。
一週間後に大きい隕石が地球に落ちて、地球が滅亡することが分かった。
狂い行く女性たちをブラックに描きつつも、
主人公の20才の女の子が彼氏に会いに行く。
「ひとめ、あなたに会いたかった....」


五木寛之
65点「青春の門」
「筑豊篇」「自立篇」「放浪篇」「堕落篇」「望郷篇」「再起篇」からなる。
青春ドラマの大河小説。

「筑豊篇」
主人公伊吹信介は田中健主演で映画にもなった。
ガールフレンドの織江役は大竹しのぶで、彼女のデビュー作である。
舞台は九州福岡は筑豊で戦時中の炭坑地で信介の少年期を描く。

「自立篇」
これまた続編として映画化されている。それ以降は映画化されていない。
筑豊の高校を出て東京は早稲田大学に入学。
単身上京しダレからの支援も受けずに自立する。

「放浪篇」
大学の演劇仲間と函館を放浪。
時代背景から学生運動的な匂いもさせつつ、演劇活動を行う。

「堕落篇」
学生運動をしても中途半端。
すっかり堕落した信介を描く。

「望郷篇」
この篇で歌手の道を進む織江にクローズアップされる。
信介は恩人の組長が危ないということで筑豊に帰郷する。
組の経営も芳しくなく、そこで信介は人肌脱ぐ。

「再起篇」
実業家の運転手を経て、そして歌手織江の正式なマネージャーになる。

文庫本ですべて上下巻なので、全てで12冊からなる。
詠みやすく、一日一冊は軽い。
戦時から戦後、信介の青臭い青春を描く大河ドラマ。
面白いのは最初のほうかな。(「筑豊篇」「自立篇」)
「放浪篇」はいまいち、動きが少ない。
「堕落篇」はまあまあ。堕落って結構スキ。
後半の織江が歌手になるとこらへんはちょっと食傷ぎみ。(「望郷篇」「再起篇」)


井上ひさし
88点「偽原始人」
学生の時に読んだ。
山中恒の書く主人公のような感じでgood。
主人公は小学生3人組。
単なる悪ガキじゃないんだよ、単なるやんちゃじゃないんだよ。
これは子供むけピカレスクなんだよ。
親を筆頭に大人を敵対しているところが圧巻。


井上夢人
72点「パワーオフ」
N先輩から借りました。
井上夢人は岡嶋二人の片割れであります。

コンピュータウィルスとそのワクチンソフト、パソコン通信の事務局などコンピュータ業界の企業小説としても楽しめる。
人工生命の進化するプログラムが暴走する。
ホントにこれありえる話なの?
でもこの小難しいテーマでさえも簡単に読める。
この読みやすさはこの作者の魅力であろうか。

68点「プラスティック」
50人ほどの日記というか手記というかインテビュー回答形式で最初から最後まで続く。

一人目の女性が初めて行く図書館で「あなたのカードは先日作成済みだ」と言われ、
夫の会社に電話したら、「奥さんは元同僚だ。あなたはダレだ?」と言われ、
見に覚えのない出来事が頻発し、新婚の夫は帰ってこない。
いろいろな人が関係者やらそうでなさそうな人やらが手記に描かれている。

これはでどうみてもアレだろうと想像は容易い。
想定範囲内ではある。
だらだらとこんなに書かなくてもという感じはした。

82点「おかしな二人」
ミステリー作家「岡島二人」の自伝である。
「岡嶋二人」とは、「井上泉(井上夢人)」と「徳山諄一」の共作のペンネームであり、ジャック・レモンとウォルター・マッソーの映画のタイトル「おかしな二人」からとったペンネームである。
作家の共同執筆としては非常に珍しい。
井上と徳山の出会いから「岡嶋二人」の結成、そして解散までを赤裸々に描いております。
この本は井上が書いたものであり、概ね主観的ではあるが、二人がうまくいっていない後半は読んでいてハラハラします。
岡嶋ファンにはたまらなくおもしろいでしょう。(はたまた辛いか?)

”ミセス○りさん”から薦められて読みはじめた岡島二人。
当初は人物より物語を描く作風に物足りなさを感じたものだが、色々と読んでいくうちにまあまあ好きな作家になっていった。

井上と徳山は大人になってからの友人で、年が結構離れていて(徳山が9才上)、書くのは井上のみ、イニチアシブが徳山にないことが解散の原因かと思われる。
藤子不二雄も晩年はAとFで別々だったそうだからな。

いくつかの作品を思いっきりネタバレしているので、「岡島二人」をある程度読んでから読むとよいでしょう。
徳さんの言い分も聞いてみたいものです。


歌野晶午
76点「葉桜の季節に君を想うということ」
「このミステリーがすごい!2004年版」の第一位。
このミスの一位ってことでかなり期待した。
読み応えを期待したのに3、4日で読み終わった。
400Pくらいあるのに異常な読みやすさ。
元探偵の主人公の男が友人に依頼されて、その友人の親類が悪徳商法会社によって殺されたのではということでその調査を行う。
いくつかのストーリーが交錯して、まあよくある軽いハードボイルドタッチで展開する。
しかし後半、驚き桃の木の仰天事実が。
作者に見事にしてやられた感じである。
「オマエやりおったな」
ブルース・ウィリスの「シックス・センス」のように結末を人に言わないようにしましょう。

でもこれこのミス一位かいな。
と考えると期待はずれ。


江國香織
60点「きらきらひかる」
江國香織の作品を初めて読んだ。
なんだこれ?

アル中女とホモダンナの異色夫婦にホモダンナの恋人の物語。
アル中でわがままな女に振り回されるホモ男に同情。

女性に人気の江國香織の作品を読んで、なぜこれが人気なのかむろむろコンピュータは理解不能だった。
これはどこがおもしろいのかのう?


逢坂剛
79点「百舌の叫ぶ夜」
暴力団と殺し屋と警察の3つ巴の話。
エピローグから伏線てんこもり。
殺し屋がターゲットを追うのだが、そのターゲットの持つ爆弾が暴発して、近くの主婦を巻き込んで死んでしまう。
そこから物語は始まる。
その主婦のダンナは警察官が問題解決のために暴走する。
主人公が記憶喪失であり、謎のまま物語の半分までが展開。
リアリティがありつつも大胆なトリック。


大沢在昌
75点「新宿鮫1、2」
真田弘之主演映画。 「新宿鮫1」は「このミステリーがすごい!91年版」の第一位。
「新宿鮫2」は「このミステリーがすごい!92年版」の第二位。
映画は見てないけど、ミスマッチじゃないの?
主人公にはもっと無骨なイメージがあるんだけど。
2のほうが作品としての評価が高い。


岡嶋二人
67点「チョコレートゲーム」
ミセス○りから借りました。
岡嶋二人とは「おかしなふたり」からもじったペンネームで2人組の共作です。

主人公は小説家の男とその息子。
中学3年の息子の素行が悪くなり、クラスメートが殺される。
小説家が学校に息子のことで呼ばれて先生と相談をする。
そこでなんと・・・!!

一気に読み終えることが出来るほどの読みやすさ。
しかしそれは内容の薄さの裏返し。
赤川次郎っぽいな。

ミステリーではなくジュニア推理小説って感じ。
現場が中学校だし。

人物描写がほとんどないので、イマイチ人物が見えてこない。
感情移入しにくい。

謎解きのところはちょっとよかった。

タイトルのチョコレートゲームというのはこの物語の核となる言葉なので、ここでは伏せておく。

75点「99%の誘拐」
N先輩から借りました。
チョコレートゲームはハズれだったが、これはまあまあ。
企業小説であり、復讐ものであり、ハイテクを駆使した誘拐サスペンスであり、という岡嶋二人の最高傑作。
しかし、私の心にはピンとこない。
この人の描く人物っていまいちピンとこないんだよね。
アクが弱いって言うか、魅力が・・・。
私は登場人物に恋する本読みなもんで。
なるほど、よくできているなあとは思うのだが。

70点「そして扉は閉ざされた」
N先輩から借りました。
男2人、女3人で海辺の別荘へ旅行へ行き、そのうちの1人の女性が事故で帰らぬ人に。
その3ヶ月後、その別荘に行った男2人女2人の4人が拉致られて核シェルターに閉じ込められる。
閉じ込められたところからこの物語は始まる。
閉じ込めたのは、亡くなった女性の母親。
事故ではなく、閉じ込めた4人のいずれかに殺められたと思っている。
極限状態に追い込み、自白させようとしているのだ。

シェルター内の密室劇と3ヶ月前の別荘の回想シ−ンで展開される。
そのシェルター内での極限まで追い込まれた人間の醜さというか面白い。
でも4人とも全然好感持てません。
人間の嫌なところが出てきています。
しょうがないか。

80点「クラインの壺」
クラインの壺とはメビウスの輪の立体系。
3次元から4次元に抜ける物体である。
岡嶋二人の最後の作品であり、最高傑作である。
とは言っても、井上夢人が全て書いたのだそうだ。

バーチャルリアリティ。
今読んでも新しい。
バーチャルなゲームの世界をのモニターになる話。
全く現実と見まがうほどのようだ。
冒頭の手を突っ込んでのサンプルのくだりはまさに現実にありえそう。
SFチックでありながら、近未来にはありえそう。

ただし、ラストはいかがなものかと。


小川洋子
78点「博士の愛した数式」
2004年本屋大賞受賞作品。
交通事故で記憶が80分しかもたない老天才数学者「博士」と、通いの家政婦の「私」とその息子のハートフルなふれあいの物語。
記憶が持たないって、そんな映画あったな。
それは「メメント」だ。
あれは数分前の出来事すら忘れてしまい、体に刺青にしてメモるんだっけ。

この博士はメモを服に縫い付ける。
所々出てくる数学うんちくがまたいい。
そういえば、私は学生時代から数学が好きだった。

「博士」が「私」の息子「ルート」を可愛がるところがよい。
ルートは「√」、髪型が√みたいだからだ。
最後は「博士」と「私」が結婚するんかな?と思ったわ。


乙一
73点「GOTH」
「このミステリーがすごい!87年版」の第二位。
乙一は「おついち」と読む。
「乙」も「一」も一画の漢字ということで、遊びでつけたペンネームであろうか、17歳という若いデビュー。
この作品を書いたときは24歳だそうだ。

いまどきの白けて不気味で狂気な男子高校生の「僕」とクラスメートの影のある美少女「森野夜」を主人公とした猟奇的連作集。
連作っていまいち入りきれないんだよな。

クールな語りでいまどきの不気味な高校生の暗黒部を描く。
ウケのいい路線であることはわかるのだが。


片山恭一
65点「世界の中心で、愛をさけぶ」
これが170万部の恋愛小説か。
高校の優等生のカップルのカノジョが死んじゃう話だ。
最初っからカノジョが死んでいるところから始まり、回想シーンは二人の出会いから描いている。
彼彼女とも優等生なんでいまいちリアルさが感じられない。
ちょっとだけうるうるしたけど、中身の薄い200頁でした。
BOOKOFFに売りましょう。

この程度が売れているってのは普段あまり本を読まない人が読んで感動してるだけじゃねーか?
活字中毒ぎみの人間としては物足りなさ過ぎ。


金原ひとみ
68点「蛇にピアス」
ベロにピアスにしてスプリットタンという蛇みたいな分割しているベロにしようとしている女の子の話。
ピアスと刺青とサドマドの世界。
ずいぶん倒錯した世界である。
かつての村上龍の芥川賞受賞作品の「限りなく透明に近いブルー」を少しだけ連想させる。
20歳の子がこんな濡れ場を書くなんて・・・。
読んでいて痛々しいね。

2004年芥川賞受賞作。
「蹴りたい背中」の綿矢りさとともに若くてかわいい女の子ということで話題となった。
「蹴りたい背中」のほうも読んだ。
相乗効果だね。
「蹴りたい背中」のほうが作品としていい(結構差がある)。
どちらも一気に読み終えてしまう程度のボリューム。
なのでこれは、20歳の娘が書いているんだなーと思いながら読む本である。
そして「蹴りたい背中」のほうと読み比べると面白い。
これが正しい読み方ね。

クールっぽいかつて不登校だったという金原ひとみ、ややお嬢様っぽいフツーの女の子の女子大学生の綿矢りさとそれぞれ相応の金原らしい、錦矢らしいの作品だった。
内容はかけ離れているが、なにやら本質は似ているような気がした2作品だった。


川端康成
68点「雪国」
川端康成のノーベル文学賞授賞作品。
ノーベル賞ときたもんだから、どんなにすばらしいのかと思ったんだけど・・・。
中年と芸者のわからんやりとりに終始。
これがワビサビの世界なのか?
10代20代の若者が読んでも退屈なだけ。
30代以降の人が読むと味わい深いかも。
「伊豆の踊り子」に対してなのか?


北村薫
76点「空飛ぶ馬」
「このミステリーがすごい!87年版」の第二位。
「わたし」なる名前ナシ女子大生と落語家が主人公。
本当に日常の事柄を「わたし」が提議して落語家が千里眼よろしく推理する。
それが全くわざとらしくなく、納得&感心。
中編集のシリーズもの。

文章のタッチと作者の名前からして女性っぽいが、実は男性。
逆に高村薫はあのハードな文章から想像しにくいが、実は女性。
似た名前でありながら、作風と作者の性別が逆なのである。


京極夏彦
92点「姑獲鳥の夏」
「このミステリーがすごい!95年版」の第七位。
シリーズ第一作。
弁当箱初級編。
シリーズを重ねると弁当箱がドカベンの厚さになるぞ。
厚さの割りにはダレ場なく読ませる手法は見事。
思わず顔をしかめたくなるオゾマシイ描写も見事。
なぞ解きシーンがめちゃくちゃ長い。


桐野夏生
84点「柔らかい頬」
「このミステリーがすごい!2000年版」の第五位。
直木賞授賞。
30代の女性が主人公で、浮気相手を情事のさなかに愛娘が失踪。
ちょっと「氷点」を思わせる。
ラストシーンも新しい手法。
画期的であると同時に「本当はどうなったの?」と思ってしまうのだが、
書き手次第でどうとでもなってしまうんだなあと思うと
「読者って結局書き手の思う壺なんだなぁ」と小説自体に考えさせられたりする。

88点「OUT」
「このミステリーがすごい!98年版」の第一位。
田中美佐子主演でドラマ化。
桐野夏生の名が一気に全国区に。
食品工場に働くサエない女性らが同僚の殺人の死体遺棄に手を貸す。
死体を解体する描写がおぞましく見事。

69点「水の眠り 灰の夢」
女性の視点から描かれた「柔らかい頬」「OUT」とは一味違った桐野夏生の作品。
松本清張の社会派っぽい、堅苦しい作品。
「柔らかい頬」「OUT」に比べ面白味に欠ける。


小池真理子
69点「恋」
直木賞授賞。
浅間山荘事件のあった日に一人を銃殺、一人を重傷に負わせた女性のお話。
学生運動さなかを背景に官能的な若夫婦と主人公の女性の不思議な恋の話。


河野多恵子
69点「落日の日」
処刑寸前の夫に面会が許された妻が鼻を食いちぎられた。


司馬遼太郎
92点 「竜馬がゆく(1−8)」
コミックの「おーい、竜馬」の後に読んだ。
初めて読んだ歴史小説。
幕末一番人気の竜馬に、未だに男性が選ぶ好きな作家第一位の司馬遼太郎ときたもんだ。
その司馬遼太郎の代表作。面白くないわけがない。

歴史小説が苦手の人にもおすすめ。司馬遼太郎は面白いぞ!!

70点「燃えよ剣(上下)」
新選組のケンカ師土方歳三のお話。
土方と沖田のやりとりはおもしろいぞ。いいコンビだ。

75点「世に棲む日日(1−4)」
長州藩の吉田松陰、高杉晋作のお話。
幕末と明治維新と豪傑を輩出した松下村塾のことも書かれているぞ。
幕末三傑と言えば、竜馬・歳三・晋作だ。
司馬遼太郎の「竜馬がゆく」「燃えよ剣」「世に棲む日日」の三作を押さえていれば幕末はOKだぞ。

79点「国盗り物語(一〜四)」
一、二巻は斎藤道三篇。
三、四巻は織田信長篇であるが、実は織田信長&明智光秀篇だ。
もともと幕末以外はあまり好きではなかったのだが、一つ戦国時代をと思って読んだこの作品。
信長目的で読んだのだが、道三にすっかりハマってしまった。
寺の小僧から油売りになり、やがて美濃国の大名にまでなる。
見事な成りあがりである。
最近では、この成りあがり方は道三一人ではなく、親子2代によるものだと言われているが、本作では道三一人の成りあがりとして描かれている。
そのほうが絵になる。
土岐頼芸より譲り受けた側室の深芳野が生んだ道三の嫡男義龍だが、道三はその嫡男義龍に殺されている。
義龍は道三の子ではなく、土岐頼芸の子であるという説もあるが、本作ではまさにその通りにドラマティックに描かれている。
時代小説というのは、事実を見事にそしてドラマティックに脚色しているものである。

思わず行ってしまった稲葉山の稲葉山城。(今の岐阜城)
稲葉山(金華山)にも己の足で登ったぞ。

後半の織田信長&明智光秀篇だが、信長は道三の婿であり、光秀は道三の甥である。
どちらも道三の意志を継いでいる。
豊臣秀吉、徳川家康等の歴史上の要人を脇に押さえつつ、思ったより光秀を描いている。
本能寺の変で光秀が信長を討つわけだが、そこに至る経緯までをなるほどと描く。
要人の性格描写が読者を唸らせる。

次は司馬遼太郎の「新史 太閤記」を読むべし。

72点「新史 太閤記(上下)」
太閤、つまり豊臣秀吉の物語である。
単なる百姓の息子が、なんと関白にまでなる奇跡の成り上がりストーリー
知恵の化身である。
己の知恵だけでここまで成り上がれるのか?
信長、光秀、家康は大名の出なので、秀吉のほうが成り上がり度はすごいのだ。
そういう意味では道三に近い。

天下統一の野望は道三→信長→秀吉→家康と受け継がれる。
秀吉で統一され、家康で完成する。

「国盗り物語」信長篇は信長、光秀視点であるが、本作は当然秀吉視点。
同じ出来事でも視点が違うとこうなるかという感じも面白い。
本作の前に「国盗り物語」を必ず読むべし。

70点「歳月」
明治維新後の話。
薩長土の次の肥、つまり佐渡藩の出の江藤新一の話。
竜馬がゆくの後に読むとよい。
維新後の試行錯誤しながらの政府の運営が面白い。
西郷VS大久保の征韓論が面白い。

もっと詳しくしりたければ「翔ぶが如く」を読むと良い。


島田荘司
85点「奇想、天を動かす」
「このミステリーがすごい!89年版」の第二位。
よぼよぼのじいさんが消費税を請求された中年女性の店員を刺殺。
なにげないこの事件の裏には・・・!
おぞましさやら執念やら殺人者の内情など、地味ながらも読み所たっぷり。

「吉敷竹史シリーズ」である。

80点「異邦の騎士」
「このミステリーがすごい!88年版」の第五位。
島田荘司の代表作。
記憶喪失の男が記憶が戻らないまま若い女の世話になりつつ同棲をする。
その男の過去には・・・!!
これは島田荘司のデビュー前の作品でありながら長い間眠っていたそうで、出版したところあまりの反響に本人ビックリだそうな。
なるほど、タッチがやや若いような感じがする。
3日で読める読みやすさ。

男の過去の衝撃、そしてその裏には。
かなりのドンデン返しで楽しめる。
秀作。

88点「占星術殺人事件」
「御手洗潔シリーズ」の代表作、いや島田荘司の代表作と言える。
デビュー作ではあるが、「異邦の騎士」の後に読むといいでしょう。
舞台は昭和54年、そして昭和11年に起きた事件を解くというもの。
これはかなりのレトロ、かなりの古臭さは禁じえないが、これもまた猟奇的事件を生々しくしてくれる。

占い師の御手洗潔と、ワトソンくん的な石岡和己、この二人が主人公である。
そしてこの二人は「異邦の騎士」で知り合う。
御手洗潔は非常に魅力的である。
ぶっとんだ、おちゃらけた、おちゃめな天才である。

本作は非常に読み応えのある。
40年前に起きた伝説的犯罪なので、謎解きを非常に楽しめる。
そして謎解きを読者に挑戦している。

メイントリックを金田一少年の事件簿がオマージュしている。
読む前からわたしは知っていたのだが、それでもかなり楽しめた。

これでわたしは島田荘司に、そして御手洗潔にハマった。

69点「御手洗潔のメロディ」
「御手洗潔シリーズ」の後期の連作。
御手洗潔シリーズは猟奇さと御手洗と石岡のやりとりが魅力なのだが、それが足りない。
と言うか御手洗があんまり出てない。
物足りなさが残る。

72点「御手洗潔の挨拶」
「御手洗潔シリーズ」の前期の連作。
うーん、御手洗潔シリーズは短いとダメだな。
でも御手洗の魅力は出ている。
「御手洗潔のメロディ」
よりはだいぶマシ。
でも御手洗潔シリーズは長編に限る。

79点「寝台特急「はやぶさ」1/60の壁」
島田荘司の代表作と言えば「御手洗潔シリーズ」と「吉敷竹史シリーズ」だ。
本作は吉敷竹史シリーズの第1作目である。
御手洗は天才肌のぶっとび探偵だが、吉敷は粘りの地味な刑事である。
島田のこの2大シリーズが同一作者とは思えないくらいの書き分けである。

本作はタイトルからわかるようにトラベルミステリーではあるが、それほどトラベルに重点を置いていないので、ちょい苦手なわたしもすいすい読めました。
2日で読めたね。

まあ、ボクは御手洗シリーズのほうがスキですね。

72点「斜め屋敷の犯罪」
御手洗潔シリーズの第2作目(異邦・・から数えると3作目)。
「占星術殺人事件」がめちゃくちゃ面白かったので期待したのだが・・・。
斜めで奇怪な洋館に館主である老人とその孫娘、その娘の取り巻きの青年、本格派にありがちな舞台で物語は展開する。
物語の半分までは、事件発生の背景と当事者のことなので、御手洗と石岡くんが登場するのは中盤から。
御手洗シリーズの魅力は御手洗が登場している場面でしかない。
彼が登場するまでの間は退屈でしかないのだな。


志水辰夫
68点「行きずりの街」
「このミステリーがすごい!92年版」の第一位。
塾の講師が教え子を探しにかつて教員として教鞭を振るっていた街を訪れる。
ドラブルに巻き込まれた教え子を救うだけでなく、探偵よろしく学園経営の疑惑を暴く。
シミタツ節を満喫しよう。
水谷豊主演のテレビドラマにもなっている。

79点「飢えて狼」
志水辰夫のデビュー作。
シミタツ節と呼ばれるシニカルな表現はチャンドラーに傾倒する原寮を彷彿とされるハードボイルドである。

かつて山で友人を亡くしたクライマー渋谷は、山を捨てボート修理をするオヤジである。
ある日、海で殺されそうになり、店は燃やされ、従業員は殺されてしまう。
巻き込まれ式かと思いきや、スパイの協力を余儀なくされる展開はうまい。
物語は第一部から第三部で構成され、第二部は丸々、北方領土択捉での冒険描写は少々かったるい。
でも作者はこれが書きたかったようで、その前後は付けたしだそうだ。
何のために択捉にいかされたのかが弱い。
主人公の男がよい。
終わり方がすっきりしない。

「ゆきずりの街」よりはシミタツ節がより理解できる。


真保裕一
90点「ホワイトアウト」
「このミステリーがすごい!96年版」の第一位。
織田裕二の映画。
ミステリーって言うよりは冒険モノ。
ダイハード+クリフハンガーとか言われているけど。
泣けるね。
主人公のがんばりには涙がとまらない。

81点「奪取」
知性派アウトロー青年のピカレスク小説。
ヤクザに追われつつも、芸術的贋札作りに情熱を燃やす青年を描く。
手塚道郎篇、保坂仁史篇、鶴見良輔篇の三部からなるのだが、主人公はひとり。
名前を変えているわけである。

贋札を作成するための印刷技術について非常に詳しく描かれている。
そういう職業に就いている人が読めばさらに楽しめるであろう。

ボリュームがあり、読み応えがある。
最後はどう決着をつけるのかと思いながら読んでいたが、ああいう終わらせかたをするとは、作者に好感。

60点「奇跡の人」
8年もの植物生活から奇跡の復活をした青年が主人公。
記憶を失っているので事故前の自分さがしの旅に出る。
はっきりいって、わがままで自分勝手で考え方がガキ。
いやな主人公。


雫井脩介
81点「火の粉」
面白かった。一気に読めた。かといって軽いわけではない。
一家殺人事件の冤罪となった男と無罪を言い渡した裁判長。
裁判官を引退後、隣にあの冤罪の男が越してきた。
そして奇妙な事件が発生する。
主人公はだれなのだろうか?
あの隣人か、あの嫁か?元裁判長は最初と最後を締めただけ。
物足りなさは登場人物のキャラクターか。
全然好感持てない。
一番気に入らないのは隣人よりもあのアホダンナ。
アホすぎる。
ストーリーもひねりがなく若干単純ではあるが、飽きさせない筆力はあるようだ。
昼メロか火曜サスペンス劇場っぽい、オバ様ウケしそうな感じ。


高木光彬
89点「白昼の死角」
戦後日本を舞台にした天才犯罪者のピカレスクもの。
法の抜け道なんざいくらでも・・・と言わんばかりの法治国家への挑戦状のような作品。
リアリティ抜群、本当にこれを実行したらどうなるんだろうと思わず思う。
ピカレスクものの名作。


貴志裕介
81点「黒い家」
「このミステリーがすごい!98年版」の第二位。
内野聖陽、大竹しのぶ、西村 雅彦らの出演で映画化。
日本ホラー大賞。
損害保険の仕組みに詳しくなる。
保険金詐欺の話。
金のためなら手段を選ばない狂った人間を「13日の金曜日」のジェイソンさながらホラーっぽく描かれている。


高見広春
88点「バトル・ロワイアル」
「このミステリーがすごい!2000年版」の第四位。
原作は藤原竜也、ビートたけし出演の15禁映画化。
この映画が国会で問題になっている。

新人の作品である。
中学生同士が殺し合うという内容故に新人賞どころか佳作にまで上がらなかった。
42人もの生徒を全て名前入りで登場させてもあまり混乱せずに読める。
キャラクター設定にちょっとあざとさが見えなくもないが、各々で描かれるエピソードは悪くない。よい。


高村薫
89点「マークスの山」
「このミステリーがすごい!94年版」の第一位。
直木賞受賞作。
合田刑事シリーズの一作目。

まず山での1つの心中事件と1つの殺人事件が起こる。
殺人事件は山小屋に住む工員の男が犯人ということで、ここまでが序章。
数年後に連続殺人事件が起こる。
その影には心中事件で生き残った少年が青年となって・・・。

警察の内情をこんなに詳しく、リアルに描かれた本があっただろうか。
かなり見事、かなりハード、こんな感じなのかな?

私は高村薫の作品の中ではこれが一番スキである。
合田刑事シリーズの三作目のレディ・ジョーカーだと重厚すぎる。
読むのがキツすぎる。

本作の文章はすばらしい。
私好みの文章である。
人物描写、重厚感、比喩、虚無的表現、読んでいてワクワクする。
原寮的である。

80点「照柿」
「このミステリーがすごい!95年版」の第三位。
合田刑事シリーズの二作目。

これは一作目のマークスとまた似て非なるもの。
合田シリーズである意味が不明瞭。
だが、合田の人間性は魅力的。
ハードでストイックでシニカルでギラギラしている。
合田が出ているだけで、読んでいて楽しい。

合田刑事の幼馴染の部品工場の課長が主人公ではあるが、その課長もかなりぶっとんでいる。
その課長の元交際相手の女が引き起こした事件をきっかけに接近し、それに合田をからめて展開していく。

ちなみにタイトルの照柿というのは果物の柿のような色のこと。

85点「レディ・ジョーカー(上下)」
「このミステリーがすごい!99年版」の第一位。
グリコ・森永事件をモチーフに圧倒的なリアリズムで描く大力作。
あまりのリアリズムさ追求のため、娯楽性を排除、ノンフィクションのような迫力がある。
ハードカバー上下巻、文字びっちり、読みごたえたっぷり。
しかし、それゆえ読んでいてなかなか進まん。
読みやすいの反対、読みにくい。
む、難しい。

合田刑事の三部作。
「マークスの山」→「照柿」→「レディジョーカー」の順
本作から読んでも問題ない。


太宰治
89点「人間失格」
往年の名作。そして太宰の代表作。
これは太宰の自叙伝的な物語である。
道化た少年時代、ハンサムな青年時代、自堕落けた後年と何ゆえ彼はああなってしまったか。
現代そして後世にも語り告げられて行きたい名作。
今の精神的不安定な少年が読むとハマりそうな・・・。
と思うと読んで欲しいとは言えない。

65点「斜陽」
「人間失格」にしびれたボクは次なる太宰の代表作の斜陽を読んだ。
戦争後の没落した貴族の悲しさを描く。
主人公の元華族の娘とその母がこの物語の中心となる。

「斜陽族」の言葉を生んだ。
没落した自力では何にもできない元華族という意味か。

こんなに人間失格と違う物語が書けるのか? 似たようなものを求めたぼくとしては期待ハズレ。
太宰という高名な作家の懐の深さといったところか?


田中康夫
71点「なんとなくクリスタル」
今や長野県知事だ。
一気に田中康夫を有名にした作品。
これは彼が学生時代に手掛けた。
女子大生の日常を描いているだけだが、それにまつわるファッションなどを詳細に注釈書きしている。
その注釈の嵐で、その注釈部分が田中のエッセイにもなっている。


谷崎潤一郎
75点「痴人の愛」
「痴人の愛」、なんというエロい響きだろう。
教科書にも載っている名作、さてその内容は?という先入観で読み始めた。

普通のサエないサラリーマン譲治が、自分で見つけた原石美少女ナオミを成熟になるまで育て上げる。
ところがそのナオミが悪質なる子悪魔に・・・。

思いっきり振り回される男に振り回す女、読んでて頭痛くなってくる。


天童荒太
99点「永遠の仔」
「このミステリーがすごい!2000年版」の第一位。
これぞわたしの生涯のベスト1。すばらしい大傑作。
ボリュームの割にぐいぐい引き込まれ、キャラクターよしストーリーよしドラマ性よし。
ダレ場いっさいなし。文句のつけようがない。
本当にぐいぐい引き込まれるぞ。
ドラマになったとき「どうかな」と思ったが、ドラマのほうもおおむね合格。
でも原作のほうがよい。断然原作には遠くかなわないぞ。
せつなくてかなしくて最後の最後まで涙があふれてくるぞ。
ドラマを見た人もぜひ読んで欲しい作品。

81点「孤独の歌声」
日本ミステリー大賞の優秀賞。
女刑事、バンドしているフリーター、二重人格のエリート社員が「わたし」「おれ」「男」と章ごとにひとり称で描かれている。
女刑事が「永遠の仔」の優季とダブるよ。
最後は泣けるよ。

64点「あふれた愛」
愛にまつわる4つのお話。
永遠の仔の後に出版されたので、それを期待するとガッカリするよ。

82点「家族狩り」
「このミステリーがすごい!97年版」の第八位。
山本周五郎賞受賞
ベテラン刑事、児童相談センターの女、さえない美術教師が主人公。
天童荒太では「永遠の仔」についで評価の高い作品。 悪くはないんだが、永遠の仔に比べると・・・。

天童荒太はとても寡作である。
また、テーマが家族とか幼少時のトラウマとか結構絞られている。
「永遠の仔」「孤独の歌声」「家族狩り」の天童荒太第三作品はすばらしい作品ではあるが、テーマが似通っているという批判の声もある。

88点「家族狩り(文庫版)」
「家族狩り 95年版」の大幅加筆の作品。
文庫になる際にP900もの大幅加筆、スティーブンキングのグリーンマイルを意識したそうだ。
文庫本5冊分なのでかなりのボリュームですが、サクサク読めた。
メインの登場人物とメインストーリーは95年版と変わりないが、最新文化を織り込み、新しいエピソードを付加してストーリーに重みが出た。
うーん、しかし「永遠の仔」のは及ばないなあ。

孤独の歌声<家族狩り(95年版)<<<<家族狩り(文庫版)<<<<永遠の仔
といった感じか。


戸田京子
68点「猟人日記」
シャンソン歌手でタレントの戸田京子の作品。
内容はしっかりしたミステリーになっており、評価も高い。
女性をオトしてそれを日記に記す、ジェームス三木のような主人公。


富野喜彦
90点「機動戦士ガンダム」
学生の時に読んだ。
初代ガンダムの小説版。
テレビアニメと馬鹿にするなかれ、これぞ良質のSFとなっている。
子供向けではない。
高校生以上でないと難解過ぎて読めない。
わたしは大学生の頃に読んだ。
アニメとは結構異なる点が多い。
「機動戦士Zガンダム」の小説版だとアニメに近くなってしまう。初代が一番。
設定は抜群だし、政治がらみのことも描いている。
大人でも十分楽しめる、読みごたえのあるSF小説である。


夏目漱石
89点「こころ」
千円札の肖像でもある高名な文豪の代表作。
「坊ちゃん」「我輩は猫である」「草枕」「それから」などと有名な作品は多々ありつつも、また「坊ちゃん」「我輩は猫である」などはテレビ、映画、ドラマなどで放送されているので内容はそれとなく知っている。 でも実際に作品を読んだことはないので本作を読んでみた。
文庫で246頁と長編とは言えない長さでありながらなかなかのボリューム。
行間ギッチリ、内容ギッチリ、無駄な部分がなにひとつない。
一文一文が素晴らしいね。
心に響く重厚さがある。
気が抜けない。
旧仮名つかいで最初は戸惑うが慣れればそれもまた良い。

登場人物が私、先生、奥さん、お嬢さん、Kと一切名前が出てこない。
・先生と私
・両親と私
・先生と遺書
の三部から構成される。
有名な作品なので一応内容は知っていた。
これは先生とお嬢さんとKの三角関係の話であるということは読む前から知っていたが、その話は「先生と遺書」編でやっと出てくる。
しかしなかなかその話にならん、いやそれよりKがなかなか出てこん、と思いつつ読んでいたが、それが全然もどかしくない。
展開は遅くとも全然じれない。
それは文章の高尚さであろうか?
さすがの名作である。


貫井徳郎
80点「追憶のかけら」
図書館で借りた。
読売新聞の夕刊で紹介されていたので読んでみた。
さえない大学の文学講師が主人公。
夫婦ゲンカの末、カミさんが家を出て事故にあって逝ってしまった。
ケンカの原因が風俗に行ったのがバレたということ。
この原因に失笑。

愛娘を義父母に奪われてしまい失意のダメ大学講師だが、ひょうんなところから昭和初期の文豪の手記を入手。
これを解析して学会に論文を発表して愛娘を奪回するべく。

文豪というのは架空のようである。
で、手記の内容であるが、旧かな使いで書かれていて、この小説の半分を占める。
自殺で亡くなっているのだが、その原因となる内容が手記におさめられている。
やや夏目漱石っぽい。
これはかったるいとおもうべな、新聞での無駄に冗長とあるが、なんの、それがすばらしい。
いや、そこがすばらしい。

手記の部分と現代の部分、半々ではあるが、無理にミステリー仕立てにしてしまったような感じがして現代の部分がどうもしらける。
手記の部分のみと現代ではその謎解きだけでこの本は完成でよいのでは。
変などんでん返しの連続でこの作品を台無しにしまっている。白けるわ。
好き嫌いはあるかもしれんが、手記の部分はすばらしい。

70点「プリズム」
美人小学生教師が自分のアパートで殺害された。
これについて、その教師の関係者が各々の視点で推理する。
生徒である小学生が、同僚である女教師が、元彼が、愛人が・・・。
視点が違うとこうも人の見方が違うのだなというお話である。
もちろん、推理した結果もだ。
非常におもしろい、そして読みやすい。

75点「慟哭」
貫井徳朗のデビュー作。
幼女誘拐殺人事件を追う捜査一課長と宗教に拠り所を求め、溺れていく男を交互に描く。
非常に短いページで切り替わっていくため、堅そうでいて非常に読みやすい。
いや、この作者はもともと読みやすいようだ。
そしてこの二つの物語が最後にどう繋がるか!!
私はすっかりダマされてしまいました。マイッタ。
穿った読み方をする人に言わせればミエミエなのだそうだが、そんな見方はシタクナイ。

中盤、ちょっとこれ話進んでるのー?って思ったが、こういう結末ならまあしょうがないね。


原寮
91点「私が殺した少女」
「このミステリーがすごい!1989年版」の第一位。
このミスの歴代最高得点である。
ハードボイルドタッチの本格ミステリーである。
私立探偵沢崎の長編第二作目。 主人公は探偵。天才ピアニスト少女が誘拐され、その身代金引き渡しに巻き込まれるという話。
さすがの完成度、緊張感あり、一行一行の文章に引き込まれるクオリティーの高さ。
一行一行の文章の全てがすばらしい。

原寮自身が傾倒しているというレイモンド・チャンドラーの代表作「長いお別れ」を読んでみた。
なるほど、原寮が影響受けたというのはよくわかる。
でもまあ、原寮のほうがぼくは好きだ。

89点「そして夜が甦る」
「このミステリーがすごい!1988年版」の第二位。
私立探偵沢崎の長編第一作目。
ハードボイルド。
シリカルで毒舌な探偵沢崎がよい。
原寮はすばらしい。
むろむろのオススメの作家の一人だ。

89点「さらば長き眠り」
「このミステリーがすごい!1996年版」の第五位。
私立探偵沢崎の長編第三作目、そして完結編。
すばらしいシリーズもこれで最後。

文面文面にちりばめた皮肉っぽい表現はことごとくむろむろさんのツボを刺激する。

超オススメっす。
他のミステリーとは一線違う。
トリックやどんでん返しではなく表現に魅力を感じる。

私立探偵沢崎シリーズ。
一作目「そして夜が甦る」
二作目「私が殺した少女」
三作目「さらば長き眠り」
この順番で読もう。

彼は数年に一回しか作品を書かないという寡作中の寡作の人。
次回作はまだか?

80点「天使たちの探偵」
私立探偵沢崎の短編集。
短編6作からなる。

これも読んで損はない。


馳星周
74点「不夜城」
「このミステリーがすごい!97年版」の第一位。
金城武主演映画化。
眠らない町新宿を舞台に中国人マフィアの暗躍を描く。
しかし、中国人の名前は覚えにくい。
漢字は読めないし、フリガナがあっても発音しにくいからやっぱり覚えられない。
新宿ってホントにこんなか?


東野圭吾
73点「秘密」
「このミステリーがすごい!99年版」の第九位。
広末の映画。
ストーリーは娘の体にお母さんの乗り移ってしまうというもの。
映画では娘は広末で高校生だが、原作では娘は最初小学五年生だ。
ラストシーンは原作のほうがより劇的。「うわーそうだったのかー!!」って感じ。
小説は少年少女でも読みやすく、一日で読み終わる。

東野圭吾の少年少女用作品。
性の問題もちゃんと書かれていて◎。
広末ファンでなければ映画は見なくてよし。

95点「白夜行」
「このミステリーがすごい!2000年版」の第二位。
1章だけ読むと、結構退屈な社会派推理小説って感じ。
でもそこで挫折しては絶対ダメ。伏線の山だから。
2章以降がめちゃくちゃ面白い。
ややピカレスクっぽく、昭和史を辿ってくれる。
クオリティの高さ、キャラクターの魅力、完成度の高さ。欠点の付け所がない。

東野圭吾も宮部っちのようにいろいろなテーマで書いてくれる。
「秘密」と同じ作者とは思えない。
引き出しの多い人である。

77点「名探偵の掟」
「このミステリーがすごい!97年版」の第三位。
いわゆる推理小説のおちょくりのコメディ。
推理小説というより、金田一少年の事件簿をおちょくっているような感じ。
読んでいて、顔がニタニタ笑ってしまう。
これまた「秘密」「白夜行」とはまったく違う。

87点「どちらが彼女を殺した」
どちらが彼女を殺したか?タイトルそのままの内容である。
なぞ解きのシーンは2転3転4転5転する。

本格派推理小説でありながら読みやすさある。
東野圭吾の作品はどれも完成度が高い。
最初っから完璧になぞ解きシーンを想定した伏線の素晴らしさ。
「ほぉ〜お」と感心してしまう。

「推理の手引き」として巻末に袋綴りの解説がありなぞ解きシーンを解説している。
というのも本文だけでは理解出来ない。
その袋綴りの解説をわたしは30分間「うーん、うーん」と考えてやっと理解出来た。
す・ば・ら・し・い。

69点「放課後」
江戸川乱歩賞受賞。
舞台は女子校。
その動機はいかがなものか。

75点「同級生」
東野圭吾の学園もの。
東野圭吾の作品はいろいろなテーマで書いてくれるのだが、
パターン化しているようだ。
本作は学園物であり、ジュニア向けである。

77点「変身」
真保裕一の「奇跡の人」に似ている。
こちらのほうが断然よろしい。
脳移植手術を行った主人公の青年の変貌を描く。

医学のことにそれなりに触れているのに異常な読みやすさ。
二日で読み終えてしまった。

70点「天使の耳」
交通事故を扱った短編ミステリーの連作。
タイトルにもなっている「天使の耳」は良かったが、それ以外はイマイチ。

85点「片想い」
学生時代の元アメフト部の2人のマネージャーと数人の選手。
それの10数年後が舞台。
女マネージャーが男になっていた。
つまり性同一障害だったのだー。
そして殺人を犯したと告白する。

1女マネージャーと1選手が結婚して夫婦に。この二人がこの物語の中心。
もう1女マネージャーが性同一障害、その前彼氏。
そしてその殺人事件を追う新聞記者。
この5人が物語の中心となる。
全て元アメフト部ってことで、身近なキャラに詰めすぎ。
これトレンディードラマにしたらいいかも。

アメフト時代の様々なエピソード、そして性同一性障害をリアルに描く。

89点「殺人の門」
「このミステリーがすごい!2004年版」の第18位。
「人の死を初めて意識したのは小学生五年の時だ。」
こういう書き出しから始まるこの小説は、常に人の死、殺人、殺意について羨望するやや倒錯した男の半生を描くクライムミステリーである。
誤解しないで欲しい、この男はあくまでも受身。
小学生時代からの友人がこの主人公の人生の山場でことごとくかかわってくる。
この友人の目的は?

小学生時代から始まる成長物語的な話は東野圭吾の大傑作「白夜行」に似ている。
いや、ややこちらのほうが読みやすく、行間を考えさせる。

東野圭吾は読みやすいので定評があるが、これもそう。
そしてグイグイとひきこまれる。
久しぶりに来ました。
こりゃめっちゃめちゃ面白い。
読み出したら止まらない作品だ。
これがこのミス18位?
とんでもない、これは1位でも全然おかしくない。
ラストシーンはゾクゾクしたぞっ。
これこそ「白夜行」に次ぐぞ。

80点「天空の蜂」
ハイジャックされた超大型特殊ヘリコプター。
ハイジャックと言っても、犯人は遠隔操作でヘリコプターを操作する。
ヘリコプター内も無人である。
遠隔操作でホバリングしているのは、稼働中の原子力発電所の真上だ。
「天空の蜂」を名乗る犯人の要求は「日本中の原発を使用不能にすること、さもなくば大型ヘリコプターは原子力発電所に激突する」
つまり、日本国民全てが人質なってしまっているのだ。
しかも、無人の筈のヘリコプター内にはいたずらで忍び込んだ技術者の子供が!!

東野圭吾らしからぬ作品。
大型特殊ヘリコプターのディティール、原発の問題にこだわった超力作。
言うなれば、このこだわりは真保裕一っぽい。

それと登場人物多すぎ。
登場人物と肩書きを紙にメモしながら読んだわ。
東野圭吾作品でこんなことありえないぞ。
作者も書くのに苦労したそうで、思入れの強い作品と言っている。
読みやすさの東野圭吾作品でもっとも読むのに苦労した作品である。


福井晴敏
85点「亡国のイージス」
「このミステリーがすごい!2000年版」の第三位。
海上自衛隊が舞台である。
北朝鮮のテロリストが海自のイージス艦を乗っ取り、日本政府と交渉する。
『日本人よ、これが戦争だ!!』なのだそうだ。

”亡国”とは失われた国の日本のこと。
”イージス”とは盾のこと。イージス艦は日本を守る海自の戦艦のこと。

海自の訓練の様子や艦の様子をこと細かく表現しているとことは感心すると同時にイメージがつかめなくてよくわからん。
かわぐちかいじの「沈黙の艦隊」の小説版って感じかな。潜水艦じゃないけど。
中盤以降はダイハードになる。

登場人物が海自の自衛隊員や日本政府の要人と堅苦しい肩書きの人間の多さで読み応えたっぷり。
650ページで三週間くらいかかってしまった。
しかし力作。
主人公の一人艦長の息子のが今の日本を憂いて書いた論文「亡国のイージス」は圧巻。
とは言ってもところどころ太字で抜粋でしか紹介されていないが。
平和ボケ、外交ヘタ、危機感ゼロのくそったれな日本政府及びくそったれな国民を酷評しているこの論文(タイトルにもなっている)はまさに作者の言いたいことなのだろう。
この論文をちゃんと読みたい!!と本気で思う。

女っけゼロ。
かなりの力作。
かなり気合入れて読まないと読み切れない。

75点「川の深さは」
元警察官の今警備員に落ちぶれた中年が主人公。
ケガをした工作員である青年と連れの若い女性の二人を、その中年が匿うというところから物語が始まる。
巻き込まれ式ではあるが、熱意を忘れた中年が若い二人から熱いものを思い出す。

同作家の「亡国のイージス」を軽くしたような感じ。
「亡国のイージス」でもそうだったが、親子ほどの年の離れた
おっさんと青年の友情にも似た信頼関係がスキみたい。

ちょっとウルってきたね。


船戸与一
62点「炎 流れる彼方」
「このミステリーがすごい!91年版」の第三位。
船戸与一は舞台が外国のハードボイルドという感じ。
いずれもボリューム大。
本作は主人公がツキに見放された小林寺拳法講師の日本人。
舞台はアメリカ。
若干巻き込まれ型の冒険アクションもの。
世話になったロートルボクサーのアメリカ人と同居しているのだが、そのボクサーに不相応な試合が決まった。
実はそれは・・・という話。
ボリューム厚く中身は薄く、読んでいてカッタルイかな?


平井和正
95点「狼の紋章」
学生の時に読んだ。
当時のわたしのバイブル。
わたしはこの主人公に憧れた。「かっこいぃ〜」
不良のふきだまりの高校に一人のニヒルな男が・・・。
犬神明、わたしはこの名前を生涯忘れないだろう。
ウルフガイシリーズ第一作。
「悪徳学園」を先に読んだほうがいいかも(読まなくてもよい)
「狼の怨歌」→「狼のレクイエム12」と読むべし。
これで平井和正にハマったね。

76点「狼男だよ」
学生の時に読んだ。
これもウルフガイシリーズだが、主人公の犬神明がおっさんになってルポライターになっている。
本筋(狼の紋章)とは別ラインとして読むべし。
アダルトのウルフガイシリーズとして別路線である。

93点「死霊狩り」
学生の時に読んだ。
平井和正の中ではかなりの傑作。
いやSFとして、ハードボイルドとして歴史に残る傑作!!
かなりおもしろい。
人間に取りつくゾンビをやっつける。
男と男のぎりぎりのやりとりを書かせたら平井和正はすごい。
しびれる。

71点「幻魔大戦1〜20」
学生の時に読んだ。
角川アニメ映画化。
面白いのは1ー3まで。
4以降は変な宗教に走ってしまったようで、平井和正暴走ぅぅぅって感じ。


藤崎麻里
85点「溺れる人」
読売・日本テレビWoman’s Beat大賞カネボウスペシャル21受賞作品
作者自身のアルコール依存症のおぞましさと闘病を描いたもの。

これ、読売新聞で日曜日に5週にわたって掲載されたもので、第3話は忘れて生ゴミにくるんで捨ててしまって、わざわざ図書館へ新聞を読みに行った。
実体験であるということで、リアルな描写にシビれた。
作者が映画好きらしくって、アル中の映画をうまく取り入れていた。 下戸のぼくとしてはアル中の人の気持ちがわからなかったんだけど、この作品読んでアル中の人の見方が変わったね。
旦那に隠れて、酒を買いに行くくだりはリアルでおぞましくて迫力満点。
読んでてゾクゾクした。
闘病シーンより溺れていくシーンがいいぞう。

ドラマ化された。演じたのは篠原涼子。
駄作だった。
作者はアルコール依存症を克服し現在脚本家になることを目指し勉強中だそうだ。


松本清張
80点「点と線」
松本清張で一番有名な作品。
初めて松本清張を読んだ。
最初は取っ付きにくかったけど、後半はさすがって感じ。

78点「砂の器(上下)」
松本清張の作品のすごいところは、全然関係のなさそうな事柄を最後は一本の線にピーンと繋げてしまうところだね。
途中でこれはどう収拾つけるんだがと思わせるのに。
映画は大傑作。


眉村卓
79点「ねらわれた学園」
学生の時に読んだ。
薬師丸ひろ子主演で映画化。
映画では主人公は女の子だったが、小説では男子が主人公。
薬師丸ひろ子役の子は単なる主人公のガールフレンド。
眉村卓はこの作品のような中学生、高校生を主人公とした少年少女向けSFを沢山書いている。
わたしは中学生のころこれにハマった。
それでわたしはド近眼になった。

75点「とらわれたスクールバス前中後」
学生の時に読んだ。
角川アニメ映画。
少年SF。
スクールバスに未来人が細工してタイムマシンとなってしまった。
先生と男子二人女子一人と未来人のタイムトラベルもの。


三浦綾子
80点「氷点(上下)」
娘を通り魔に殺された医師夫婦が、「汝敵を愛せよ」を身をもって実現するべくその通り魔の娘を養子として育てるという話。
テレビドラマで大人気。
ドラマを見て本当に女子高生が自殺してしまうという事件があった。(本当)

また、氷点人気にあやかって「笑点」が出来たんだよ。(これも本当)

90点「塩狩峠」
キリスト教徒が迫害されていた時代に一人の少年がキリスト教に出会い、目覚めて牧師になるまでを描く。
少年の成長物であり、キリスト教の素晴らしさを説いている。
主人公の少年が級友との何気ない約束を破ろうとするときに、父親に言われてシブシブ約束を果たし、 約束の重要性を説くエピソードがある。
そのエピソードがわたしは忘れられない。
ちなみに父親の名前がわたしの父親と同じ。
三浦綾子は実際にもクリスチャン。
こちらのほうが泣けます。
「氷点」のほうが有名だけど、こちらをオススメ。

80点「道ありき」
三浦綾子の自伝的小説。
三部作からなる。
「道ありき 第一部 <青春編>」
「道ありき 第二部 <結婚編> この土の器をも」
「道ありき 第三部 <信仰編> 光あるうちに」

<青春編>は三浦綾子の壮絶なる青春時代というにはあまりにも過酷な、波瀾万丈な時代を描く。
教職時代に終戦を迎え、虚無感になり、13年間の闘病生活、クリスチャン前川正の献身。
キリスト教との出会い、洗礼、三浦光世と出会い、そして結婚。
過酷、壮絶、あまりな人生。
それでいてキリスト教に救われ、人に恵まれた三浦綾子の自叙伝。
涙なしには読めない。
これを読むと無信仰な人間も「教会に行ってみようかな〜」とちょっぴり思ったりする。
そして前田正に憧れる。
オイラは前田正になる〜。

<結婚編>は三浦綾子、三浦光世の夫婦生活から氷点出筆までを描く。
<青春編>が壮絶すぎたので<結婚編>は非常に物足りない。
夫婦生活のエピソードを並べただけに過ぎない。

<信仰編>これは完全なる三浦綾子のキリスト教解説本。

というわけで、読むべきは<青春編>のみです。

81点「泥流地帯」
「泥流地帯」と「続泥流地帯」がある。
氷点と違って「泥流地帯」だけでは話が続かないので続のほうも必ず読みましょう。

大正時代の貧しい百姓の兄弟の話。
ちょっと貧乏くさいんだが、なんとも気持ちのいい兄弟である。
幼馴染の女の子が売られていくところは切なくて悲しい。
泥流とは大雨などで増水した川の水と土砂、下流に向かって高速に流れ下る自然災害のことだ。
実際に大正15年に北海道の十勝岳で起こった泥流(大正泥流)を描いている。

北海道とキリスト教と不幸、これが三浦綾子の3大テーマである。

あれだけもったいぶったお母さんを続編で登場させたのに、あまりキャラクターが出てこない。
書ききれてないのがちょっと残念。


三谷幸喜
68点「オレはその夜多くのことを学んだ」
三谷幸喜作の絵本のような感じのお話。
10分くらいで読み終わります。
好きな子と初デートをした後に、夜中に電話しようとするだけの話なのだが、気弱な男のせつなさを描いております。
「シャワーを浴びている時にかかってきた電話は実はかかってきていない」なのだそうです。


見延典子
69点「もう頬づえはつかない」
早稲田大学の女子大生の卒業制作である。
奥田瑛二と桃井かおり主演で映画化。
一人の若い女性の生活を生々しくも汗臭く描く。


宮部みゆき
92点「火車」
「このミステリーがすごい!93年版」の第二位。
社会派ミステリー。
みやべっちの最高傑作。
メインとなるべき登場人物がラストまで現れない。
ローン地獄にハマった女性の心情が素晴らしく良く書かれている。
心情がよくわかる。
また、弁護士の話には思わず納得!!

宮部みゆきのすばらしさは、色々な引き出しを持っているということ。
社会派ミステリーあり、時代ものあり、少年SFあり、と作品毎に同じ作者とは思えないところが素晴らしい。
また、作風も実験的とも思われるような書き方をする。
「こういう描き方もあるんだぁ」と感心。

63点「クロス・ファイア(上下)」
少年SFもの。
映画にもなったバイロキネシス能力を持った少女の話。
何故彼女があそこまで悪に立ち向かうのかが疑問。
正義感?
中盤からオバさん刑事が登場し物語を引き締める。
そこまでは読んでて辛い。

彼女の初期の作品と思いきや、「火車」より後に書かれている。
宮部が読者層を下げて書いているようだ。

70点「我らが隣人の犯罪」
短編。
肩こらずに読める。
赤川次郎の短編のようだ。

62点「かまいたち」
時代物短編。
これも好みの差ということで。

76点「龍は眠る」
「このミステリーがすごい!92年版」の第四位。
少年SFもの。
日本ミステリー大賞授賞。
超能力を持った少年の苦悩をリアルに描く。
単なる超能力ものとはチト違う、宮部らしさかと。 宮部の作品の中でも評価が高い。

82点「魔術はささやく」
「このミステリーがすごい!91年版」の第九位。
これはミステリーのような少年SFのような。
このミステリーがすごい!92年度の第四位。
父親がいない少年が主人公。その主人公が連続殺人に巻き込まれ・・・。
宮部の少年ものでは一番よい出来。
「龍は眠る」より好き。

72点「蒲生邸事件」
「このミステリーがすごい!97年版」の第四位。
少年SFもの。
タイムスリップ物。2.26事件
よくあるタイムスリップ物かなと思ったが、歴史は戻ろうとしているという考え方は新鮮。
さすがは宮部、一味違うぜ。
前半は主人公の少年(浪人生)が気に食わない、というか性格悪い、というかやな奴。
後半からはマシになっていくけど。

62点「淋しい狩人」
短編シリーズもの。
主人公が古本屋のじいさん。
ちょっとした推理物だね。

84点「理由」
「このミステリーがすごい!99年版」の第三位。
直木賞授賞。
それ故宮部の代表作と言われているが、宮部フリークはそれを納得していない。
主人公なし、事件後のインタビュー形式でストーリーは展開される。
またも実験的手法。
社会派ミステリー。
不動産にまつわる、地上げ、居座り屋、・・・のことも詳しくなる。

90点「模倣犯」
怒涛のボリューム。
ハードカバーで上下巻、どちらも驚異の700Pだ!!
主人公が不明ではあるが、「理由」とは違う。
若い女性を殺害する犯人、被害者の身内、捜査する警察、マスコミ、各々を丁寧にリアルに描く。
第一部では事件発生と被害者の身内を、
第二部では加害者の生い立ちから犯罪過程まで、
第三部では被害者のその後と事件解決を描く。

第二部ではちとダレるところが惜しい。
しかし、みやべっちの代表作と言ってもいいだろう。
気骨あふれる義男老人がよい。
みやべっちは老人の書き方がよいね。


宮本輝
79点「幻の光」
これが純文学と呼ばれる本なのだろうか?
非常に古臭く、ビンボー臭く、そしてとても暗い作品である。
板前の後妻となった32才の女性が主人公。
ドロドロの不幸な生い立ちの回想シーンが殆ど。
こちらまで暗くなる。


村上春樹
85点「ノルウェイの森」
400万部以上の驚異の大ベストセラー。
女性の間であの赤と緑のブックカバーは社会現象となり一大ムーブメントを引き起こした。
現役最高の実力を持つ作家と言わている。

内容は三角関係自殺精神異常者を描いた官能小説だね。
官能部分は結構くるね、電車内で読むとちょっとキツイものが・・・。

67点「世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド」
「ノルウェイの森」の次に読んだ村上春樹の本。
まるで違うので戸惑ってしまった。
”世界の終わり”と”ハードボイルド・ワンダーランド”で違うお話を交互に展開。
ファンタジーものというのか、SFと言うべきか、不思議っぽい話である。
ちょっとかったるくなったね。
登場人物の名前が出てこない。
2つのお話が交わりそうで交わらなくてでもちょっとは関わりはあるような、でも実際にはないような。
それはラストシーンまで続き、あとは想像にお任せという感じ。
よくわかんないって?読めば分かる。
でも読んでいて「おもしろいなぁ」とは思わなかった。

68点「ねじまき鳥クロニクル」
「世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド」っぽい。 それよりはやや現代風、しかし不可思議的。
「世界の終わり〜」よりは読みやすい。
奥さんに出て行かれた憐れなる失業者の男に不可思議な人間達が現れる。
3巻からなる結構なボリューム。1・2巻はまぁまぁだが、3巻になると冗長に感じる。
笠原メイの存在と間宮中尉の戦争の話がよい。
それ以外は・・・。


村上龍
75点「限りなく透明に近いブルー」
村上龍のデビュー作であり芥川賞授賞作である。
村上龍自ら監督して映画化もした。
ピッピーのドラックとSEXまみれのスキャンダラスな日常を描いた話。
主人公の「リュウ」は村上龍?

88点「テニスボーイの憂鬱」
テニスを愛する30過ぎた妻子を持つおっさんがテニスに仕事に不倫に頑張る。
妻子持ちの男がこんなに簡単に恋愛きるんか?
ウィンブルドンでマッケンローがコナーズを破って両手を空に突き上げるガッツポーズをするような歓喜の瞬間という考えはおもしろい。
そんな瞬間がオイラにもあるのだろうか?


森村誠一
89点「致死家庭」
学生の時に読んだ。
推理小説で有名な森村誠一の作品。
本作は彼にとってはあまり有名ではない。
が、わたしにとっては一番好きな作品。
自閉症かつ家庭内暴力をする少年が主人公。


矢作俊彦
82点「スズキさんの休息と遍歴 またはかくも誇らかなるドーシーホーの騎行」
主人公のスズキさん40才は広告会社の副社長。
愛息ケンタと全共闘時代の同志に会いに行くというロードムービー。
スズキさんとケンタとのやりとりが実に微笑ましい。
息子っていうのもいいなぁと思わせる。


山口雅也
67点「ミステリーズ」
「このミステリーがすごい!95年版」の第一位。
中編集。
舞台は向こうで良質のコメディミステリー。

89点「生ける屍の死」
この作品はスゴイ!。
福田和也の「作家の値打ち」では、ミステリー部門で最高の92点を記録。
探偵小説研究会編の「本格ミステリ・ベスト100」では、なんと一位。
舞台はアメリカ、洋書と思われるほど。山口雅也はあちらが舞台がお好きらしい。
死者がフツーに甦ってしまうというハチャメチャSFっぽい設定でありながら、葬儀文化に対する蘊蓄満載。
葬式文化だけでなく、死体、死に対する哲学、宗教感、それでいて遺産相続や精神的外傷を絡めた本格派ミステリーでありリアリティも抜群。
葬式文化を蘊蓄するところはどこまで本当なのかよくわからんが・・・。
主人公が早々に殺されてしまうが甦って、腐食してしまうので防腐処理をして自分を殺した犯人を推理する。
文庫で650頁というボリューム。それでいてクオリティは最初っから最後まで少しも落ちない。
洋書の翻訳っぽい。読み応えたっぷり。幕の内弁当のように読みどころ満載。


山中恒
86点「おれがあいつであいつがおれで」
学生の時に読んだ。
山中恒は童話作家である。
本作は大林宣彦の尾道三部作の第一部「転校生」の原作。
ご存じの通り、男の子と女の子が入れ代わってしまうというお話だが、
映画では中学生(高校生?)だが、原作では小学六年生。
なんと小学館の「小学六年生」という雑誌に連載されていたのだ。
そのときのわたしは小学六年生としてリアルタイムで読んだ。
今考えると小学六年生にとっては過激な内容だった。

89点「ぼくがぼくであること」
学生の時に読んだ。

山中恒の童話の主人公には意気統合してしまう。
主人公になりきって読んでしまう。

山中恒は子供向け番組「あばれはっちゃく」の原作者でもある。
主人公の男の子がやんちゃというのを通り越して、子供むけピカレスクという感じがする。
ピカレスクというか、かなりひねくれた子であるケースが多い。
素直じゃない子、それはわたしの分身のようで、読んでいて主人公になりきってしまう。そこがまたいい。
「クソババアぶっころす」とか言ったりする。
童話で普通そうは言わないよね。

85点「とでたら本こ」
学生の時に読んだ。
これも良い。
主人公の男の子の保護者が三度代わり、その都度名前がかわる。

80点「サムライの子」
学生の時に読んだ。
同和問題。
前述の三作とはちょっと違う。
主人公の女の子は部落の女の子。
でもそれを隠して小学校に行っている。友達もそのことをダレも知らない。

その子のおとうさんがその子に言ったセリフ。
『友達と遊んでいるときにもしおとうさんをみかけたら、
 「おとうさん」と言ってはいけないよ。おとうさんにかけよってもいけないよ。
 友達がおとうさんに「ブラク、ブラク」と石を投げつけたら
 友達を止めてはいけないよ。
 お前も一緒に「ブラク、ブラク」と言ってお父さんに石を投げつけるんだよ』
ここのエピソードを読んでわたしは涙を流したね。


横溝正史
75点「本陣殺人事件」
金田一耕介シリーズの一作目。
横溝正史初期の代表作。
まさに推理小説の王道と言う感じ。
でも今読むと、どうしても「金田一少年の事件簿」とダブるし、
東野圭吾の「名探偵の掟」を読んだ後だと、素直に推理小説を楽しめない。


横山秀夫
70点「半落ち」
「このミステリーがすごい!2002年版」の第一位。
このミス一位だったんで、すっごく期待してたんだけど、ちょい期待ハズレ。

アルツハイマーの妻殺しの元警官が自首してきた。
ちゃんと自白しているのだが、犯行後の2日間のことだけはしゃべらない。
いわゆる半落ち状態。
警官→検事→ブンヤ→裁判官→看守と立場を変えた視線で被害者をみるという設定は面白い。

意外というか、かなり読みやすい。
2,3日で読めるでしょう。
読みながらどんな結末なんだろうとすっごく期待してたんだけど、こういうオチかぁ。

90点「クライマーズハイ」
「このミステリーがすごい!2004年版」の第七位。
クライマーズハイとは山登りのトレーニングハイのようなものらしい。
地方の新聞社内部をリアルに描く。
「半落ち」でちょっと敬遠していた横山秀夫だが、本作にはまいった。
なんとリアル、なんと重厚。
なんと横山秀夫は元新聞記者だそうだ。納得。
飛行機事故の全任キャップを命じられたはぐれ新聞記者の物語。
1985年の御巣鷹の日航ジャンボ機墜落事故をブン屋の視点でリアルに描く。
タイトルは事故で寝たきりになった山登りの同僚のエピソードからきている。
新聞社内部のリアルさ、一面が出来るまでの工程などが興味がそそられる。
「半落ち」は大衆向けに書いたのかな?
断然こっちがお奨め。
横山秀夫はおじさんウケしそう。
男臭さがぷんぷんであります。

89点「第三の時効」
「このミステリーがすごい!2003年版」の第四位。
連作集ってあんまり好きじゃない。
じっくり読める長編のほうがいいのだが。
展開が早いのはいいのだが、キャラクターに感情移入する前に終わっちゃう。

ところがどっこい、こいつは違う!!
この作品は連作集で、強行犯を扱う捜査一課の123班の腕っこきの班長がおり、
個々の作品で主人公は変わるものの、登場人物は重複する。
すばらしいのは個々の作品のクオリティの高さ。
こんなに良い連作集はいままであっただろうか?
タイトルにもなっている「第三の時効」が秀逸。
しびれますぞ。

75点「深追い」
「第三の時効」にしびれたのでこっちを読んだら・・・。
同じ連作集。
舞台の警察署内という点で舞台は同じだが、登場人物は重複しない。
「第三の時効」と同じ構成ではあるが、ストーリーは軟弱。
ちょっとがっかり。
意識的に書き分けているようだ。
だが私にとっては期待外れ。


綿矢りさ
72点「蹴りたい背中」
大人し目のちょっと陰あるヒネクレ女子高校生とクラスメイトのアイドルヲタクのダサ男の話。
蛇ピに比べてかなり楽しんで読める。
文章の完成度は19歳の娘とは思えない。
こっちのほうが蛇ピより評価が高いようだ。
ボクも同意見。
楽しく読めたね。
なによりタイトルが良い。
まさにピッタリ。
それでかなり得している。

2004年芥川賞受賞作。
「蛇にピアス」の金原ひとみとともに若くてかわいい女の子ということで話題となった。
なのでこれは、20歳の娘が書いているんだなーと思いながら読む本である。
そして「蛇にピアス」のほうと読み比べると面白い。
これが正しい読み方ね。

クールっぽいかつて不登校だったという金原ひとみ、ややお嬢様っぽいフツーの女の子の女子大学生の綿矢りさとそれぞれ相応の金原らしい、錦矢らしいの作品だった。
内容はかけ離れているが、なにやら本質は似ているような気がした2作品だった。

これどっちも自分がモチーフみたい。
そんな気がした。



むろむろエッセイ 優れた小説の条件





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